我が国の相続税法は、被相続人の国籍が外国籍かどうかに係わらず、その相続人が居住者か非居住かで相続税の納税義務の範囲を画しています。
法の適用に関する通則法36条
しかし、法の適用に関する通則法36条によれば、「相続は、被相続人の本国法による」と定めています。
この文言からすると、少なくとも、相続人の数及び相続分等は、被相続人の本国法に基づいて相続税の計算をするのではないかと思料してしまいます。
この通則法36条の解釈に関しては、課税当局からの取扱い等は見当たりませんが、相続人の数及び相続分は、我が国の民法を適用することで見解が統一されています。
その理由の1つとして、課税の公平性を担保するためであるといわれています。
例えば、被相続人の本国法を適用することによって、相続人の数や相続分に差異が生じ、結果として、相続税も異なって算出されてしまう。
もう1つは、相続税法の規定には、日本の民法を適用する明文の規定がある以上、被相続人が外国籍の者であったとしても日本の民法を適用した場合の相続人の数及び相続分をいうものと解される。
したがって、被相続人に配偶者が複数いたとしても配偶者は1人、法定相続分2分の1としてカウント、また、配偶者の税額軽減も1人分のみ、さらに、1億6千万円も1人分のみ、ということになります。
遺産が未分割の場合
では、遺産が未分割の場合も、我が国の民法規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って相続財産を取得したものとして課税計算を計算するのか、です。
この未分割の場合については、課税当局からの見解が示されています。それによれば、「被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算する」ことになります。
その理由ですが、日本のように包括承継により遺産分割手続きによって遺産を取得する国もあれば、遺産に課税された後に財産を取得する国もあり、国によって遺産の取得形態はまちまちです。したがって、本国法の規定に基づく実際の財産の取得形態を相続税法の適用上、これを無視することはできない、からではないでしょうか。