旧商法においては、株主に対する配当は「利益の配当」と呼ばれていました。しかし、会社法になってからその呼び名も「剰余金の配当」に変わりました。
名称変更の理由
変更理由の一つとして、旧商法上の「利益の配当」という呼び名は、「会社が一事業年度に稼いだ利益を配当する」、というイメージを持っていたため、と言われています。
実際には、その年に稼いだ利益のみを配当に回すということはなく、配当決議以前までに会社が稼いだ利益の累積額(内部留保額)から配当していましたし、当期損失が出た場合でも安定配当という名の下で任意積立金や配当平均積立金を取り崩して配当していました。
もう一つは、旧商法においても、資本金の減少、自己株式の処分により、その他資本剰余金を増加させ、この「その他資本剰余金」からの配当も可能とし、これも「利益の配当」と呼んでいました。
しかし、その他資本金剰余金からの配当は、稼いだ利益からの配当ではなく、資本金の払い戻し以外の何ものでもありません。
以上の点を踏まえて、会社法では、①過去の利益の累積額からも配当できる、②その他資本剰余金からも配当できる、ということから「剰余金の配当」という文言に変更したと言われています。
会社法上の利益の配当
なお、会社法には、「利益の配当」という文言が存在していますが、これは、持分会社(合名会社、合資会社又は合同会社を総称)にあっては、社員に対する配当は、利益剰余金の配当のみであり、資本剰余金等からの配当は認められていないことによるものです。その代わり、資本剰余金等からの配当は、出資の払戻し、持分の払戻し、という制度で行うことになっています。
税法上の配当
所得税法及び法人税法においても、株主に対する配当は「剰余金の配当」(資本剰余金の額の減少に伴うものなど一定ものを除く)、持分会社の社員に対する配当は「利益の配当」(一定のものは除く)と定義、そして、協同組合等の出資分量分配金などについては、「剰余金の分配」(出資に係るものに限る)と定義されています。
なお、これら配当等については、法人税法上、当該受取配当金の100分の50に相当する金額について、益金不算入の規定の適用があります(完全子法人株式等及び関係法人株式等の株式は除く)。