アメリカの相続税嫌い

 2010年に死んだ人には相続税がかからない、というアメリカ事情はちょっと驚きですが、2011になるとまた再び適用停止になっていた2001年時の60%という最高税率の「連邦遺産税」という名の相続税法が復活する、というのも更に驚きです。

アメリカ相続税法の歴史
 アメリカにおける相続税は、最初の立法が南北戦争前の1862年で8年後に廃止され、その後1894年、1898年、1916年、1924年と立法がなされるもののそれぞれ数年にして廃止となってきました。
最初の戦費調達目的の相続税を除き、その後は立法される都度、相続課税は合衆国憲法に違反するのではないかとの訴訟が起きており、1894年の相続税法は憲法違反との最高裁判決により1年で廃止となっております。その後の立法については合憲判断を得ているものの、みな短命でした。

アフガン・イラクが相続税を復活
最後の相続税立法は1932年で、数次の改正を経つつ現在に至っていましたが、1990年代のアメリカの保守化の潮流に乗ってブッシュ大統領が登場してきて2001年に時限立法としての相続税廃止法が可決成立しました。
とは言え、この廃止法は時限立法だったので、時限消滅を止める手立てをする予定だったと思われますが、アフガン・イラク戦争の泥沼化により政権への国民支持が離反してしまい、予定が狂ってしまいました。時間の経過とともに廃止法が廃止となることになってしまいそうです。
アメリカが共和党支持に振れるときには相続税は嫌われ、民主党支持に振れるときには相続税が復活するようです。

アメリカと日本のアベコベ
 アメリカの相続税は遺産そのものを課税対象にする財産税なので相続人には納税義務はありません。それなのに、相続人の取得する相続財産の取得費は相続時時価です。
日本の相続税は「相続税」という名の一種の所得税なので、納税義務は相続財産を取得する相続人にあります。それなのに、相続人の取得する相続財産の取得費は相続税の課税評価額ではありません。(ただし、最高裁の二重課税禁止判決が出たので、今後は二重課税にならないように規定の解釈と適用をすることになると思われます。)